あてんしょん

HPの一部をこちらに移設予定……とか言ってたらこっちが本体になりつつある今日この頃。更新適当。内容も適当。トラパス警報発令中。ついに注意報を脱したぞ。

2015年8月9日日曜日

そしてその遅れをssでごまかす作戦

またか。

前回のルーミィ視点。
たまにならルシロも好きです。

てゆうかお腹すいてき(やめろ)






 エベリンは好きだ。


 あまいもの、しょっぱいもの、すっぱいもの、からいものはちょっと苦手だけど、とにかくいろいろなお店が軒を連ねて飽きることがない。右前のお店の唐揚げは、衣のカリッとした食感はさることながら、あまじょっぱいつけだれにこの上なく合って、もう美味しいどころの話じゃない。ないのだけれど、その向かいのお店のケーキセットもこれまた絶妙で、とくに裏メニューの特製チョコレートケーキときたら! しっとりとしたスポンジに乗っかった、ひんやりとしてあまい、それでいて甘すぎない奇跡的な味わいのジュレからはほのかにリキュールの大人びた香りがして、あたしはひとくち食べた瞬間にすっかり虜になってしまった。ああ、でも。その三軒うしろのお店。一見地味で、マリーナに連れていってもらったときはなんだこの店と思ったのだけど、ところがどっこい、あそこのピザと来たら! 店主が生産地までこだわり抜いたマトマ、あれが最高で、口に入った瞬間じゅわっと溶けるように広がる甘味……っ! よし、きめた。そこにしよう。あたしは後ろを振り返る。

「ねえ、今日はあのお店にしよう!! あたしもうおなかぺっこぺこ!」
 
 満面の笑みで言うと、シロちゃん――ことトレイトンは苦笑して、だから残念美人って言われるんですよなんて言ってくる。なんてデリカシーのないひと、じゃなくてドラゴン。

「うっさい馬鹿トレイトンばーかばーか」

 頬を膨らませて言ってから、トレイトンの腕を引っ張って店に連行する。途中でふと足を緩めて彼の指先に軽く触れると、なにも言わずに絡めてくれた。ドラゴン姿のふわふわもふもふも大好きだけど、こっちも負けずに好きだ。彼の指は色の白くて肌触りの良い一級品。ホワイトドラゴンだからってずるいと言いたくなる。関係あるのかどうか、いまいちよくわからないけど。私はその指をぎゅっと握り締める。

 うん。幸せ。

 世界の誰に残念と言われても、構うものか。
 だってこれが、トレイトンが好きになった私なのだから。


「こんにちわっ」
「お、ルーミィちゃんいらっしゃい!! 今日はご機嫌だねぇ」
「えへへ、わかる?」

 さっきから弛みっぱなしの頬も、踊り出しそうな心も。だからきっと、鼻腔を掠めるピザの匂いのせいだけじゃなくって。誰のせいかなんて、今はまだ、言ってなんかやらないけど。でも、そんな日が来ても、きっと、きっと悪くない。そんな予感があたしの胸の底にひっそりと息をひそめて、それでも確かにここにある。ひとよりずっと長い私たちの時のなかで、ゆっくりゆっくり、花ひらくように、そんな時がきっと来る。

 きっと、いつかは。



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